今回は、資産に関する法人税務の内、有価証券の譲渡原価の算出方法についてご説明いたします。
1.譲渡原価の算出方法
有価証券の譲渡に係る原価の額を算出する場合における一単位当たりの帳簿価額は、移動平均法もしくは総平均法により算出されます。
ここに言う移動平均法とは、有価証券を取得する都度1株あたりの平均単価を算出する方法を言い、一方で、総平均法は、 期首に保有する有価証券とその事業年度に取得した有価証券の取得価額の合計額を総株式数で割って平均単価を算出する方法を言います。
移動平均法
算出方法:(直前簿価+新規取得価額)÷(直前株数+新規取得株数)
総平均法
算出方法:(期首簿価+期中取得価額)÷(期首株数+期中取得株数)
〜具体例〜
<前提> 期首帳簿価額 2,000株 @500円
1月31日取得 3,000株 @400円
6月30日売却 5,000株 @800円
9月30日取得 2,000株 @650円
6月30日売却時の譲渡原価を算出
①移動平均法で算出した譲渡原価
譲渡単価:(2,000株×@500円+3,000株×@400円)÷(2,000株+3,000株)=440円
譲渡原価:@440円×5,000株=2,200,000円
②総平均法で算出した譲渡原価
譲渡単価:(2,000株×@500円+3,000株×@400円+2,000株×650円)
÷(2,000株+3,000株+2,000株)=500円
譲渡原価:@500円×5,000株=2,500,000円
2.メリット・デメリット
(1)移動平均法
売却の都度その時点での譲渡単価を算出する必要があるため、売却や購入銘柄が多い場合は管理が煩雑になります。
一方で売却の都度、売却損益が確定させることが可能なので利益管理上はメリットがあります。
(2)総平均法
期末に一括して譲渡原価の算出を行うため管理が簡単です。
一方で期末にならないと譲渡原価が確定しないため売却損益の金額が期末まで確定しません。
3.算出方法の届出
一単位当たりの帳簿価額の算出方法は、新しい区分、種類の有価証券を取得した場合、 その事業年度の確定申告期限までに選定方法の届出を行いますが、何の届出も行わない場合は移動平均法により計算します。
また、選定方法を変更する場合は、その変更する事業年度開始の日の前日までにその旨を記載した届出を行うことにより変更が可能です。
以上となります。
次回は、有価証券の期末評価について紹介させていただきます。
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