令和2年12月10日、政府与党は令和3年度の税制改正大綱を公表しました。
今年度の特徴として、新型コロナウィルスの影響による企業や個人の負担を軽減するとともに、ポストコロナ時代に向けて、経済構造の転換・好循環を促進することに重点が置かれています。
その中で、今回は法人課税を中心とする改正案の概要をご紹介いたします。
1. 産業競争力強化に係る措置
(1)デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制の創設
「つながる」デジタル環境の構築(クラウド化等)による事業変革を行う場合に、
税額控除(5%・3%)又は特別償却(30%)ができる措置を創設する。
(2) カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の創設
カーボンニュートラルに向け、脱炭素化効果の高い先進的な投資(化合物パワー半導体等の生産設備への投資、生産プロセスの脱炭素化を進める投資)について、税額控除(10%・5%)又は特別償却(50%)ができる措置を創設する。
(3) 活発な研究開発を維持するための研究開発税制の見直し
① 厳しい経営環境にあっても研究開発投資を増加させる企業の税額控除の上限を引き上げる(現行:25%→30%)とともに、インセンティブを高めるための控除率カーブの見直し及び控除率の下限の引下げ(現行:6%→2%)を行う。
② クラウド環境で提供するソフトウェアなどの試験研究に要した費用について、研究開発税制の対象とするほか、所要の見直しを行う。
(4) コロナ禍を踏まえた賃上げ及び投資の促進に係る税制の見直し
雇用環境の悪化に対応するため、新規雇用拡大・教育訓練支援に着目した形に見直しを行う。
(5) 繰越欠損金の控除上限の特例
コロナ禍の厳しい経営環境の中、赤字であっても果敢に前向きな投資(※)を行う企業に対し、その投資額の範囲内で、最大5年間、繰越欠損金の控除限度額を最大100%(現行:所得の金額の50%)とする特例を創設する。
(※)カーボンニュートラル、DX、事業再構築・再編等
2. 株式対価M&Aを促進するための措置の創設
自社株式を対価として、対象会社株主から対象会社株式を取得するM&Aについて、対象会社株主の譲渡損益に対する課税を繰り延べる措置を講ずる。
3. 国際金融都市に向けた税制上の措置
投資運用業を主業とする非上場の非同族会社等の役員に対し支払われる業績連動給与について、一定の要件の下、損金算入を可能とする。
4. 中小企業の支援
(1) 中小企業向け投資促進税制等の延長
中小企業者等の法人税の軽減税率の特例及び中小企業投資促進税制等を延長するとともに、商業・サービス業・農林水産業活性化税制の対象業種を中小企業投資促進税制に統合する
(2) 所得拡大促進税制の見直し
雇用者全体の給与等支給額に着目した要件に見直す。
(3) 中小企業の経営資源の集約化に資する税制の創設
M&Aを実施する中小企業者の投資リスクに備える準備金制度を創設するとともに、前向きな投資を推進するための措置等を講ずる。
以上となります
次回以降では、上記のうち中小企業向けの項目について説明を致します。