今回は季節業務の1つでもある年末調整の税制改正について解説いたします。
1. 令和2年度から適用される改正点
(1) 給与所得控除
令和2年10月19日号でお知らせした給与所得控除について令和2年から改正となります。給与所得の計算上、いわゆる概算経費として給与収入からその給与収入の金額に応じて一定の金額を控除することができます。これを「給与所得控除」といいます。
改正前の給与所得控除は、55万円~195万円でしたが、改正後は、65万円~220万円に増額されました。
(2) 基礎控除
「基礎控除」とは、所得税の計算上、すべての納税者が無条件に受けることができる所得控除をいい、改正前は38万円とされていました。
令和2年分から、その基礎控除に適用条件が次のとおり定められることなりました。
合計所得金額2,400万円以下 | 基礎控除額48万円 |
合計所得金額2,400万円超 2,450万円以下 | 基礎控除額32万円 |
合計所得金額2,450万円超 2,500万円以下 | 基礎控除額16万円 |
合計所得金額2,500万円超 | 適用なし |
(3) 所得金額調整控除
基礎控除の改正に伴う増税について、子育て世代等に配慮するため令和2年分から「所得金額調整控除」という制度が新設されました。
その年の給与の収入金額が850万円を超える所得者で、次の要件のいずれかに該当する場合に、最高15万円を、給与所得の金額から控除することとされました。
① 所得者本人が特別障害者
② 同一生計配偶者が特別障害者
③ 扶養親族が特別障害者
④ 扶養親族が年齢23歳未満(令和2年分の場合、平成10年1月2日以後生)
※所得金額調整控除額の計算
(給与の収入金額-850万円)×10% (最高15万円)
(4) 各種所得控除等を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等
同一生計配偶者、扶養親族、源泉控除対象配偶者、配偶者特別控除の対象となる配偶者及び勤労学生の合計所得金額要件がそれぞれ10万円引き上げられました。
扶養親族等の区分 | 合計所得金額要件 |
---|---|
同一生計配偶者 | 48万円以下 |
扶養親族 | 48万円以下 |
源泉控除対象配偶者 | 95万円以下 |
配偶者特別控除の対象となる配偶者 | 48万円超133万円以下 |
勤労学生 | 75万円以下 |
(5) ひとり親控除及び寡婦(寡夫)控除
① 未婚のひとり親に対する税制上の措置
所得者がひとり親(現に婚姻をしていない人又は配偶者の生死の明らかでない一定の人で、事実婚をしていない人等をいいます。以下同じです。)である場合には、「ひとり親控除」として、35万円を控除することとされました。
② 寡婦(寡夫)控除の見直し
寡婦の要件について、一定の見直しを行った上で、寡婦(寡夫)控除をひとり親に該当しない寡婦に係る寡婦控除に改組されました。
また、「特別の寡婦」に該当する場合の寡婦控除の特例が廃止されました。